主人公ハリスの年齢はたぶんアラカン頃。超豪華なドレスに450ポンドも支払うなんて(日本円にして現在の約250~500万円)とてもできないよぉ~。庶民だったら、老後の資金を貯めても1枚のドレスに高額なお金を支払うなんて思いもつかない。ハリスは当時のイギリス階級社会で家政婦として働く中で節約した暮らしを続け舞い込んだ幸運を味方につけついに目的額を達成。ハリスの大らかな人柄と無鉄砲さがたまらない。ハリスは1枚のドレスに魅了されただけではなく、上流階級の人々に一矢を報いる。パリのストライキ闘争やディオールの職員を焚きつけ、ついにはオート・クチュールを変えていく展開が小気味よいのだが、一方ではパターン化された出来すぎのような気もする。
ところが、映画を観終えて原作をググってみて納得がいった。原作はポール・ギャリコの『ハリスおばさんパリへ行く』だった。本作の”ハリスおばさんシリーズ”は4冊あり、その後に『ハリスおばさんニューヨークへ行く』『ハリスおばさん国会へ行く』『ハリスおばさんモスクワへ行く』を出し、ハリスおばさんはパリを足掛かりに国会やニューヨーク、ましてやモスクワまで殴り込みをかけているのだ。「ハリスさん、素晴らしい!」の一言を添えたくなった。
しかも驚いたことにポール・ギャリコは4冊のシリーズの途中に『ポセイドン・アドベンチャー』を書いていたのだ。半世紀前に観た大好きな映画の原作者でもあったと知り嬉しくなった。映画に登場した老夫婦の元気なおばあちゃまを思い出した。彼女は、皆が心配そうに見守る中で、若い頃は潜水が得意だったと言いながら大きく息を吸い込んで海面に潜った。ハリスと彼女がだぶって仕方がない。