2015.06.30 16:53|



『シェルブールの雨傘』と云えばあの甘く切ない映画音楽で一世を風靡した作品です。若い頃あまり好きになれない女優さんだったので観なかったのですが、カトリーヌ・ドヌーヴがこんな役回りをしていたなんて驚き!
名前が残る有名な作品だし、梅雨時期に鑑賞するのも良いかと軽いノリで観始めたので、期待しなかった分、得させてもらいました。「全編が歌で!」なんて最後まで持つのかの懸念材料も、冒頭に「ミュージカルよりオペラが・・・」のセリフが盛り込まれていて監督の意気込みにほだされてしまいました。
でも、実際ジュヌヴィエーヴとギィが歌うシーンには、観る年齢が遅すぎたのかしら殊更心揺さぶられませんでした。ジュヌヴィエーヴが高らかにあなたを愛してると歌い上げても妙に白けてしまうのは何故だろう。一途というより、大好きなおもちゃが手に入らない駄々っ子のような恋だったからかも。
その点、華麗なドヌーブの美しさの対比にあるようなマドレーヌが、さなぎが殻を破るように魅力的な女性に変貌していくのが印象的でした。ラストのエピローグで2人の女性が登場しますが象徴的に描かれていると思います。
ジュヌヴィエーヴの母親のエムリ夫人も捨て置けない人物でした。
「恋で死ぬのは映画のなかだけよ」と娘を諭すなかなかの手腕家。望まれているとは云え、妊娠している自分の娘を嫁がせようとするのですから大したものです。彼女とカサールと交わされる会話に微妙な勘違いを見せたりするのも面白い。娘にほれ込んだカサールを「男」と見込んで、娘とともに経済的に危うい自分をも守って欲しい目論見があるようでもあり・・・。
ですが、私には全然責める気もなくこれもありだろうと思えます。色んな生き方があって、これが正しいとか間違いとかはないのだろう。おそらく若い時だったらこんなふうには思えなかったでしょう。
調べたところによると、監督・脚本のジャック・ドゥミの作品には、「実らぬ初恋」と「私生児をもつ母」というテーマが根底に繰り返されるらしいのです。実際ドゥミは近所に米兵の子をみごもった幼なじみが居たとあります。(ドゥミの妻であり監督でもあるアニェス・ヴァルダが撮った追悼映画『ジャック・ドゥミの少年期』より)
『シェルブールの雨傘』には前篇となる『ローラ』の作品があると知りました。ここに、本作の主要人物である宝石商のロラン・カサールの青年時代が描かれていて、カサールは米兵の子をみごもって捨てられた幼なじみ・踊り子ローラに恋をするのです。『ローラ』では、私生児の母ローラのもとに、初恋の相手であり子供の父親であるミシェルが現れ、カサールは失恋する件となるらしい。本作でエムリ夫人に話すシーンがありました。
結果的にはジュヌヴィエーヴとギィは自分にあった伴侶を得たのではないでしょうか。




2015.06.22 14:20|



原題が「MAIN STREET」らしいのですが、ただ本通りという訳ではぴんと来ませんでしたが、小さな町(それに居住する人々)という意味あいもあると辞書で見つけ、やっと納得いきました。ストレンジャーは”よそ者”。紛らわしいタイトルに、サスペンスジャンルのみを鵜呑みしてチョイスした人にはお気の毒な映画となるのでご注意を!

先日新聞で六ヶ所村に関しての記事を読んだばかりだっただけに身につまされました。故郷に原発がある私には他人事に思えず引き寄せて観まずにいられません。言葉巧みに取り入っていく様子が描かれていて、「プロミスト・ランド」を観た時の感想と重なりました。
経済的に窮地に立っている人や地方に、補助金や町の発展を餌に、受け入れてもらえないような核廃棄物や中間処理施設や有害廃棄物の話を持ち掛けます。本作のコリン・ファース演じるルロイと、「プロミスト・ランド」のデイモン演じる主人公のスティーヴが似ていて、私的には、切実なサスペンス!
他所ごとに思えてつまらないと感じられる人に何と言っていいのか・・・。



2015.06.18 14:53|


異人たちの棲む館
原題
MAGNIFICA PRESENZA/A MAGNIFICENT HAUNTING
別題
素晴らしき存在
製作年度
2012年イタリア


役者を夢見る主人公、いわくつきそうなバルコニー付き館、それだけでもぞくぞくするのに、彼にしか見えない上品でノスタルジックな扮装をしたわけあり幽霊さん達8人が住んでいるという設定。更には主人公はゲイかも、私好みの要素が揃っていました!
イタリア映画の素晴らしさを充分に満喫しました。
ピエトロにしか幽霊さん達の姿が見えないのはごくごく自然なことに思えます。彼らから演技指導をしてもらいオーデションに臨むのですが、そうはうまくいきません。
幽霊さんたちはアポロニオという劇団員で、1943年にパルチザン活動が発覚してファシスト政権に殺されてしまっていた・・・。彼らは自分たちが死んでいることに気づいていなかったのだが、今が2010年だと知り、劇団員の女優が死んだと思っていたわが子が、(検索してもらった)パソコン画面に、戦禍を生き延び70歳を超え家業の薬局を継ぎ孫まで居たというシーンに胸が熱くなり、戦後と言ってもわずか1世代しか経っていないのだという事実に、今更ながら気づかされ「戦後は終わらずまだまだ続行中」と思わずにいられません。
幽霊たちから探してほしいと頼まれた当時の看板女優を演じたアンナ・プロクレメルはどことなく清川虹子を思わせる風貌(笑い)。
彼女は密告した張本人ですが裏切り者の苦しみを背負った人生を歩んでいました。それを知った幽霊たちは一瞬驚きますがすぐに笑い出し、彼らの優しさに触れた気がしました。まさに別題となった”素晴らしい存在”の何物でもありません。
ラスト幽霊さんたちは解き放たれ、館から出て劇場に出向き上演できなかった芝居を演じ、ピエトロは客席で唯一の観客となります。エンドロールの最後の最後までアップになったピエトロの表情に釘づけになりました。目の動きや表情のみであれだけ惹きつけるのですからさすがです。彼を演じたエリオ・ジェルマーノは本作でイタリア・ゴールデングローブ賞・最優秀男優賞を獲得、他にも色んな賞を獲得しているんですね。
明るく前向きだが、性的アイデンティティーにうまく馴染めない孤独な若者ピエトロと8人の異人たちとの爽やかなファンタジー。
こんな愉快な異人たちだったら是非出会いたいものです。
オズペテク監督の別な作品に期待できます。
いとこのキャラクターがイマイチ伝わってこなかったのが残念といえば残念でした。
2015.06.05 15:22|


観終わった後で検索しているうちに、ベサニーを演じたのがあの「テラビシアにかける橋」のアナソフィア・ロブだったと、初めて知った次第

実話と知らなかったら所詮フィクションだものと思えるほど、ベサニーは立派な女の子すぎる!近寄りがたいほど勇敢で強すぎるヒロイン。でも、それは絆が深い最強の家族や友人らの温かいサポートや手助けがあったからだろうと思えば納得いきました。
オアフ島の底抜けに明るい海の青さがたまらない。そこから生まれ出す波が生き物のようにうねり、パイプラインになったその波の内側をサーフィングしていく影像にしびれてしまう。映画館の大型スクーリーンで観たかった!
『同情』とは?
津波に襲われたタイへボランティアへ行き、被災者の話に耳を傾けていたべサミーが思わず泣いてしまい、ボランティアリーダーのサラが彼女に「同情したことを恥じることはないわ」というシーンがあります。
「同情したことを恥じることはない」ー、観終わった後ずっとこのセリが頭の中でリフレインしていました。
これを私なりに分析してみることにします。ベサミーにとってこの時点までは、すべてを無くしてしまった被災者に同情していたのも同情されていたのも片腕を失った本人だったのではないだろうか?ベサミーはその時同情じゃ何も変わらないと気づいたにちがいない。昔『同情するなら金をくれ!』という言葉が売り文句になったドラマがありました。観ていないのですが、核心を突いた言葉のように思え記憶に残っています。
サラは他にも「苦しい時、その部分が大きく拡大されて視野が狭くなり全てを見れなくなってしまう」とも言っているんですよね。なるほどと肯きながら観ていました。
片腕になったベサニーに、復帰戦の大会で真っ向から勝負を仕掛けたマリーナ。親友のアリアナが、そんなマリーナを見兼ねて自ら失格になる覚悟で阻止します。でも、ベサニーは「同情しているあなた達より手を抜かず真っ向から勝負してくれた」と彼女を悪くないと言い、むしろ「嬉しかった」とマリーナに語る。同情は相手を対等にみていない裏返しの感情ですもの。誰にでも通用するわけではありませんが、ベサニーだったら絶対にそう思うはず。
私もボランティア活動をしながら”同情”には人一倍気遣ってきました。同情論は難しい。相手とタイミングを計らなければ大きく間違えてしまいます。自分自身が同情される立場にある時、一時的には受け入れられたようで優しさを感じられるかもしれないけれど、次には自力で進まなければ階段を登れません。
最近自分を見失っている私に、プライド高く生きよと喝を入れてもらえた映画だったのかもしれませんね。



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