ブログdeロードショー企画・真冬のファンタジーその2 「おおかみこどもの雨と雪」

2013.02.28 18:03|

 
監督 細田守  製作2012年
 
細田守監督の「時をかける少女」「サマーウォーズ」で描かれるキャラクターたちには好感を抱いてきたが、今回は今までとは違うだろうと予想はしていました。やっぱり心残りに見終えることになってしまいました。
公式サイトで細田守監督がこの映画を撮るにあたっての動機です。「自分の身近で子供が出来た夫婦が増えてきたときに、親になった彼ら、特に母親がやたらカッコよく、輝いて見えて子育ての話を映画に出来ないかなと思ったんです。自分が体験してみたい憧れを映画にしたという感じです」。それが全編を通して勝ちすぎていたように見受けられました。子育ての経験不足から来るストーリーやエピソードが大雑把で甘く、最後まで感情移入することが難しかったと言わざるをえません。「家族は恋人」というコマーシャルフレーズを聞いた時と同じ違和感でした。
花は本当に子ども思いの、(男からみた)理想的な母親でありすぎて、あまりに母親を偶像化してしまっているようで、でき損ないの母親である私には、最後まで眩しい存在でした。

異類婚姻譚は幼い頃読んだ民話やお伽噺に登場してたので、『おおかみ男』や『おおかみ子供』の設定をさほど珍しくもなく受け入れられました。
でも、今回は現代が舞台のストーリーだったので、子供の父親の『おおかみ男』や『おおかみ子供』って、たぶん今の世の中にとけ込めない生き辛い人たちの隠喩だろうと考えてもみました。だから、『おおかみ子供』の雪と雨が人間として生きるか狼として生きるかという問題は、単に狼か人間をチョイスするのではなく、自分の人生をどう生きていくのかという問いを投げかけているのだろうとも。人には狼のように醜くて残忍で飼いならすことができない闇を誰もが持っていますから。
もしメタファーだったら、おおかみ男を不可解な事故死で早世させなくても良かったはずです。生き難いおおかみ人間家族4人が力強く生きていくストーリー展開でしっくりいったはずでした。余計な男親をさっさと消して、一人で子育てできる立派な母親像・花を作りたかったのでしょうか。
 
狼であると告白し、またそれを打明けられた側は驚愕したはずです。映画では2回ありました。受け入れたのは花と草平。どちらのシーンも感動的でしたが、草平が「雪が狼でもあるという秘密を守る」と、雪に語りかけたのは納得がいきました。カーテンが風をはらみ影で狼の影を落とすという描写は素敵な演出で、一番印象に残っています。
しかし、大学生にもなった花が、狼の血を受け継いでいると告げられて、葛藤もなく人生を歩むことを受け入れるのには、驚いてしまいました。ただ、父親からの「困難にぶつかっても笑みをたやさないように」という教えを守っての理由は、無茶すぎます。短い出会いの説明で、花がおおかみ男と出会い、大学を辞めてまで出産に踏み切ったのは納得いきません。求め合う気持ちを丁寧に撮り、観客にもっと共感を求めるべきだったのでは?2人の生活は閉鎖的な束の間の幸せー、いつかは壊れてしまうのが予想できました。
男と女が出会い、子をなし、その子達が自立する壮大な13年間という長い時間を、わずか2時間のアニメ映画で描けるはずがありません。1作、2作と連作にしていたら、濃い映画になったかもしれません。部分的には映像も美しくはっとさせるシーンなどが盛り込まれているだけに口惜しく思えました。さまざまな事件やエピソードが盛りだくさんで早い展開、結果、人物描写が中途半端になり物足りなさが残ります。
子育てが生易しいものではないと知っている年代の私には、ハードルが高かったです。もっと、老齢になれば受け止められるのかもしれません。
細田監督には、彼ならではの描ける世界を美しい映像で撮ってもらうことを、まだまだ期待している私です。先に映画館で鑑賞した細田監督ファンの息子も同じ気持ちのようでした。
 
追記  
花が「子育てはおとぎ話のようなもので・・・」とつぶやくセリフがありました。私も、勿論、色んな楽しい発見や楽しい思い出を子供たちからたくさんもらっています。しかし、巣立った息子たちが帰省してたまに会う時、あの子を本当に産み育てのかしらと思えても、子育ての頃をおとぎ話とは振り返れません。
 

生(あ)れし子の魂(たま)と向き合いぶつかりて己(おの)も試さる子育ての日

 

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