浮世エンターテメントファンタジー 「百日紅~Miss HOKUSAI~」

2016.02.29 15:26|映画

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活気あふれる江戸の街、両国橋の夏の昼日なたを真っ直ぐ歩いてくる意志の強そうな女——お栄、23歳、浮世絵師。移り行く四季とともに、父であり師匠の葛飾北斎や仲間たちと浮世絵を描いて暮らす日々。そして今日もまた浮世の街を歩いていく——。

声  杏   お栄
  松重豊   葛飾北斎
  濱田岳  池田善次郎
  高良健吾   歌川国直

世知辛い”憂き”世をどうせ描くなら面白おかしく描こうじゃないかということで、「浮世絵」と呼ぶようになったと、梶よう子著『ヨイ豊』にありました。『ヨイ豊』は歌川広重、歌川国芳、豊国の歌川派を書いた小説ですが、『百日紅』は同時代を生きた葛飾北斎の娘・お栄が主人公です。そのお栄の声を杏が演じていてぴったりでした。父親の北斎、こと鉄次郎を松重豊など、幻想的で怪奇な江戸の世界を満喫できます。
お栄の末の妹で目が見えないお猶のエピソードが盛り込まれていました。原作でお猶は1話しか登場していずに、残念ながら印象が薄く記憶にありませんでした。でも、お猶の「目が見えない」描写のシーンが素晴らしく、本作に膨らみを持たせたと思います。アヌシー国際アニメーション映画祭(2015年) - 長編部門・審査員賞、第19回ファンタジア国際映画祭(2015年)を初めとして、数々の賞を受賞は当然でしょう!海外でも人気作品となったようです。
「真冬のファンタジー」企画にイチオシの作品でした。
観ていない方には是非にとおすすめします。





ここから後は以前に原作本の漫画を読んだ時の感想です。





原作者の杉浦日向子さんが46歳で亡くなって10年目を迎えるそうだ。彼女が時代考証を得意とし、江戸時代に学ぶとやらのテレビ番組に出演しているのを観て印象に刻まれていたのだが、漫画本を手に取ったことはなかった。(近年「江戸ブーム」とやらで、やたら「江戸三百年の智恵に学ぶ」とか「今、エコロジーが手本」とかいうシンポジウムに担ぎ出される。正直困る。つよく、ゆたかで、かしこい現代人が、封建で未開の江戸に学ぶなんて、ちゃんちゃらおかしい。私に言わせれば、江戸は情夫だ。学んだり手本になるもんじゃない。死なばもろともと惚れる相手なんだ。うつくしく、やさしいだけを見ているのじゃ駄目だ。おろかなりのいとしさを、綺堂本に教わってから、出直して来いと言いたい」と解説で書いている)

杉浦さんは浮世絵を下地にした独特な画風で江戸の風俗を生き生きと描くことを得意とした。本作は漫画家としての代表作で葛飾北斎と浮世絵師たちの世界を描いてある。登場人物は下町の長屋に暮らす鉄蔵こと葛飾北斎とその娘、お栄に、居候の善次郎。そして、国直。彼は歌川門下を代表する絵師でありながら対立する北斎を尊崇している。歌川一門の人間関係に窮屈さを感じ、自由闊達な鉄蔵門下に憧れを抱くも義理と人情の板挟みに遭っていた。
其の九 ”鬼”というエピソードが面白かった。お栄がある武士の依頼を受けて地獄絵を描く。これまで信心の薄かったことを反省した武士は、その地獄絵を見て己の罪障を悔い改めようとしたのだ。しかし絵から夜な夜な抜け出す鬼たちにうなされて、武士の妻が病気になってしまう。そこで北斎は出かけて絵にあるものを描き加えたのだ。「てめえはいつだって描いたら描きっぱなし”始末”をしねえから悪い」といって仏様を傍らに書き添える。「な、こうすりゃ”始末”ができただろうとお栄に諭す」。
たまたま1週間前テレビでやっていたのと同じだった。十数年前に原爆図を描き気にいらずに長く押入れにそのままにして放置していた画家が、最近あるものを描き加えて「やっと完成した!」と満足げに自分の絵に見入っていた。原爆が落とされて苦しむ人らの悲惨な光景の横に、伸びようとしている向日葵を一輪加えたのだ。希望を添えて救いがある。
アニメ化もされるらしいが、コミックも是非手に取って欲しい。

コメント

Re: おはようございます

返信が遅れて今日になってしまいました。
ごめんなさ~い!
忙しくてパソコンをなかなか開けられなくて・・・。

絵を描かれる宵乃さんは好きだろうと思いますよ。是非ご覧くださいな!

おはようございます

この作品はCMが印象に残ってますが、原作の漫画があったんですか。
原作の表紙はパッと見じゃ漫画と気付けなさそうです。中の絵は映画のような雰囲気なのかな?
目の見えない描写が素晴らしいという事で、アニメーション作品ならではの表現が楽しめそうですね。そういうのは好きなので、いつか機会があったら観てみようと思います。
3作品目もご参加ありがとうございました♪
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