武士の家計簿 

2011.12.13 13:29|
原作者である歴史学者の磯田道史が書いている(竜馬伝ではなく)「龍馬史」が、他の著者らによって描かれているのより、事実に基づいて龍馬を書いてあるのにずっと好感を持っていました。この「武士の家計簿」も原作が磯田道史と知っていたのでいつかは観ようとは思っていた映画でした。
映画は猪山家の親子三世代を淡々としたタッチで撮り進んでいきます。淡々としたシネマは好きで、観終った後も気持ちが穏やかなのですが、今回は淡々としているからこそ却って人生のはかなさと哀切を感じてしまいました。人生が短いのは自明の理ですが、ここまで短い一本の映画で撮られるとなると、寂しさの方が先に立つのは拭えません。
息子の成之(伊藤祐輝)が、晩年の直之(境雅人)を負ぶい「自分は父に負ぶわれた経験がない」と言うシーンがあります。厳しく彼を教育する父でしたが、彼は着袴の祝いなどで負ぶわれていました。母であり妻のお駒が(仲間由紀恵)応えます。「何回も負ぶわれていたのよ、でも子供は覚えていないものなの・・・」じーんと胸を打たれます。親はいつも片想いなのです。気づいた時は遅く、そしてその子もまた子供たちに片想いを味わうものなのでしょうか。
 

 
後半はペーソスで締められましたが、前半は両親役を演じた中村雅俊や松坂慶子草笛光子などの多彩な顔ぶれでユーモア溢れる演出となっています。猪山家は御算用者(会計処理の専門家)として、代々加賀藩の財政に関わってきました。八代目にあたる直之(堺雅人)は、生来の天才的な数学感覚もあって働きを認められ、めきめきと頭角をあらわします。城の御算用侍が算盤をはじいている姿や弁当を食べるシーンなどは当世のサラリーマンそのもので昼休みの風景と重なるようでした。直之は一家の借金が膨らんでいることに気づくと、家財道具を売り払って返済、詳細な家計簿をつけ始めます。実際貧窮し武士の身分を売った武士もいます。龍馬の実家は武士の身分を買って武士になりました。武士は食わねど高楊枝の時代に、息子の成之に算盤、修身、読み方などと自ら教育していくのは先見の明があります。結果的に成之は新政府になり大村益次郎(?)に買われたのですから、彼の教育は間違っていなかったのでしょう。人になんと思われても、独自なやり方でやりとげる直之は、ある意味で武士らしい武士ともいえます。剣あっての侍でなく、算盤 に長じ才を認められた武士は異色でしょうがなきにしも在らず・・・です。
激動の幕末を、剣ではなくそろばん一本で生き抜いた猪山家の団結と家族の絆はあっぱれです。
最近知ったのですが、絵馬は願い事を書くのだけでなく、和算を用いる難解な問題や解答などを書いてあるものもあるとか・・・。東北地方に和算絵馬が多いのはこの映画からも伺えます。
大島ミチルの音楽が時代が変遷するそれぞれのシーンを盛り立てていると感じます。 森田芳光監督の作品では間宮兄弟(2006)  サウスバウンド(2007 )が好きでした。

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