鏑木蓮作「しらない町」

2011.12.01 14:52|
 
今年は何て欠礼はがきが多いのだろう。両親だけでなく、60代の兄弟が亡くなったというのも2枚頂いた。もらうたびに「いそげ、いそげ」と胸の内で思わずにいられない。人生は短いー、瑣末なことには少々目を瞑ってやりたいことをやるまでと自分に言い聞かせている。
 


 
故郷を離れ映画監督を夢見る青年、門川誠一は大阪でアパート管理のバイトで生活をしている。ある日なくなった独り暮らしの老人、帯家史朗の遺品を整理していた時、誠一は8ミリフィルムを見つける。映っていたのは、行商のため重いリヤカーで集落へ向かいながら、優しく微笑む女性の姿だった。
帯屋老人はなぜこのフィルムを大切に保管していたのだろう。誠一はドキュメントを撮ることを決め、映像が撮られた場所とゆかりの人たちを訪ねていく・・・。(本帯より)
 
孤独死という無縁社会をテーマに背景には戦争の話を織り交ぜ、若い世代と戦争経験者の葛藤が繋がっていくあたりの構成は巧み。
主人公が映画好き、帯屋老人もかつては映画関係の仕事をしていたので映画にまつわるエピソードが多い。旧い映画から最近では”チェンジリング”」など、誠一の語りで感想が入っていて頷きながらどんどん読める。
人とのつながりを切って生きていた青年が1フイルムに魅了され追いかけていくうちに人との係わりができ、成長していく話しにもなっている。登場する大人たちも不器用ながらそれなりに生きている。久しぶりに男気に触れ爽やかな気持ちになれた。
「大人が悩んでいることが、それほどカッコ悪くないなって思うようになって。まあ、俺からすれば、時代遅れの文化財を見ているようなかんじです」と云うのは、誠一をその場所まで連れて行った晋。誠一より年下の大学生だ。
誠一のバイト先上司である甲山のキャラは心憎い。文中に愛嬌は身につけようたって無理だというセリフがあったが、男女ともに通じるものだろう。(欲しがらないことにしよう)
ラスト、帯屋老人が生前キネマ旬報に投稿していた文章が心に響く。
「たとえエンディングが最悪でもその人の人生が決して色褪せることはない。輝いている時間があり、多くの人が彼と関わり、彼との時間を共有してきた事実は消えないからです。いうなれば、みんな彼を主人公としたキャストだったのです。エンドロールには多くのキャストの名前が連なることでしょう。そこに誇りの持てる人生を送ってきたつもりです」
一気に読ませます!映画好きの人へは特にオススメ
 
最初、図書室の平台に置かれた本を手にした時、カバー絵のアニメっぽい感じには抵抗感があったが、たぶん女性のほのぼの感を伝えたかったのだろう。
  

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