2016.08.23 15:26|


アマゾン川が逆流するポロロッカ現象が多摩川で起こるという怪しげな噂が、瞬く間に街々を呑み込んでいく。翻弄される工場の社長やサラリーマン、シングルマザー、カフェの店主たち。7編の短編が連作となっている。

とても興味深かったのは2話の田園調布を舞台にした徳大寺家の話だった。

徳大寺家のお手伝い・芳江が主人公。旦那様が脳梗塞で入院、そこの一人息子は高校卒業後に英国に留学し結婚しイギリスで暮らしている。豪邸に暮らしているのは70歳の母親だけだ。ある日ケンブリッジで息子の先輩で同じ大学寮にいた加納が訪ねて来た。当初は胡散臭いと感じていた芳江だったが彼に好意を持ち始めた。奥様も同じように加納を信頼しているふうー。ところが奥様の行動がおかしいことに気付き始める芳江。実は彼は巧妙な詐欺師で、奥様から一千万円をだまし取った。

騙されていると半ば感づいていたけれど振り込んだ奥様の言葉に共感する芳江。

『加納さんはそれほど困っていたのよ。あんないい人がそんな嘘をついてまで私を頼ってくれたのだから・・・。そんなに困っているのなら、私が自由にできるお金ぐらい役立ててもらいたいじゃない』

加納は、英国に骨を埋めるつもりの実の息子より親身になって、毎日毎日朝晩に電話をくれたという。

振り込みサギに遭う高齢者が絶えないのがいつも不思議だったが、理由は老境に入ってからの寂しさだったのだ。妙にしんみりと分からせてもらえた作品でした。


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