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ある男

2019.09.11 15:22|
文藝春秋
発売日 : 2018-09-28
夫の大祐が事故死、妻が大祐の家族に連絡を取ると大祐ではないと告げられた。夫は他人の戸籍を手に入れて生活していた事実がわかった。自分が暮らしていた男はいったい誰なのか? 他人の戸籍と交換して全く違う人物を生きる男たちが登場する。
結婚して姓が変わり40年あまり経つ。馴染んでいるが、独身時代の私の歴史と結婚後の新しい氏名で紡いだファミリーヒストリーはどこか切り離されている感覚も確かに在るのだ。
それでさえも違和感があるのに、他人の名前を騙って生き続ける人生って想像がつかない。
でも、父が殺人事件を犯し死刑になった息子の誠が新たな人生を歩もうと、戸籍を買った経緯は心にしみる。



本作を読み終わってから平野さんの思いや他の感想を結構読みました。平野さんの分人主義には大いに肯けます。でも、小説的には欲張りすぎてモチーフが散漫になってしまっているような・・・。在日韓国問題を抱えた弁護士の背景などはそれ一つでテーマと成り得るほど大きな問題です。読んでいてそちらに気持ちが傾いていると、東日本大震災・ヘイトスピーチに代表されるような近年の日本を覆う排外主義・犯罪の被害者遺族と加害者家族両方が背負う厳しい現実・中年の危機と夫婦の倦怠などetc、大きいテーマが次々に出されます。読者に消化不良を起こさせているのではと危ぶまれました。
ラストに向けて悠人君で救われた気がします。

彼が夏休みの宿題として提出していた俳句が最優秀賞に選ばれます。

           蛻(ぬけがら)にいかに響くか蝉の声
「古墳群公園の桜の木に、蝉の蛻がひとつ、とまっていました。
木の上では蝉がたくさん鳴いていました。
僕はこの蛻から飛んでいった蝉の声はどれだろうかと耳を澄ましました。そして、残された蛻は7年間も土の中で一緒だった自分の中身の声を、どんなふうに聞いているんだろうと想像しました。
蛻の背中のひび割れは、じっと見ていると、ヴァイオリンのサウンドホールみたいな感じがしました。そして、蛻全体が、楽器みたいに鳴り響いているように見えたので、僕は、この句を思いつきました」

弟や祖父、それから戸籍を偽った養父が事故死するなど、中学生でたくさんの困難を抱えた悠人。日常的に何だかをノートに書き記しながら、文学で少年が救われている描写にやっとほっとさせられました

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Re: No title

> しずくさん、こんにちは!
> 私もこれ、読みました。

そうなの!
早速伺いますね~

No title

しずくさん、こんにちは!
私もこれ、読みました。
なかなか面白かったです。

そうそう、結婚前の自分の名前と今の名前と、気がつけば後者の方がずっと長くなっていることに驚く・・・。

女性はフェイスブックとかも、名字が変わってしまうと探せないですが、男性はずっと変わらないから、見つけられちゃうのよね。珍しい名前だと、なおさら。
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