2016.05.07 12:08|

 

中高一貫の美心国際学園(BIS)で、SF小説を大好きな十五歳の内気な少女・空。ノンフィクションが好きでSFに理解のない同級生・武人からビブリオバトル部に誘われます。個性的な五人の仲間と活動を始めるが……。紹介書籍は多種多様、三度のビブリオバトル・シーンも臨場感たっぷりです。


最近、めきめき脚光を浴びて来たビブリオバトルです。

ビブリオバトルとは自分の好きな本を人前で紹介するというもの。昨日もラジオでやっていました。

装丁がラノベっぽくて誤想されがちですが、ビブリオバトル部員のそれぞれが取り上げた書籍は多方面に渡っていて興味深い作品が多々ありました。映画やコミックにしても同じく、偏見は自分の楽しみを閉じてしまい狭める結果になるので自分が損するだけで実にもったいない。亡き武人の祖父の書庫にあった旧いSF蔵書。それを見つけた空が感嘆の声をあげて一冊づつを手に取り解説していく所にドキドキ。もっと読んでおけば良かったジャンルだったと後悔するほど。フィクションの面白さを伝えようとして、ノンフィクション一辺倒の武人にターゲットを向けビブリオバトルが展開されていくのが良かった。

顧問の朝日奈先生が「世の中で最も危険な思想は、悪じゃなく、正義だ」という言葉にとても共感を覚えます。正義の旗を振りかざすと、同じ考え方でないものを一方的に攻撃し他を受け入れられずに、最も排他的になる怖れがあるからです。

山本弘さんは初めて知った作家さんでしたが、予想以上に深さがある本でした。


2016.04.29 11:56|
若冲


今年、生誕300年を迎え、益々注目される画人・伊藤若冲。緻密すぎる構図や大胆な題材、新たな手法で周囲を圧倒した天才は、いったい何ゆえにあれほど鮮麗で、奇抜な構図の作品を世に送り出したのか?

澤田瞳子著の「若冲」に耽読したのは2か月ぐらい前になるだろうか?コミックの「百日紅」を読んで以来、江戸時代の絵師に魅かれ”追っかけ”をしています。澤田瞳子さんは「狐鷹の天」でおなじみの作家さんです。狩野派とか全然嫌いなタッチの日本画でしたが、何故そんな風に描かれたのかを知れば知るほど、知識がなかったためとわかり、偏見で嫌ってた自分が恥かしくなりました。

実在する絵師なども登場し、どこまでが史実でフィクションなのか分からないのですが、実際に彼が描いた絵をみたいと思っていたら、タイムリーなテレビ番組がありました。

色彩への強いこだわりで用いた絵の具。その中でプルシアンブルーを使用したという説明。この色はプロイセンで造られた最初の人工顔料だったそうで、江戸の中期、長崎の出島に1キロしか輸入されなかったらしい。この稀少な人工顔料を、日本で最初に使用した画家が若冲だったとか。
次に感銘したのは『病葉』をも繊細緻密に描いていたこと。咲き誇る花々だけでなく、私だったら忌み嫌う立ち枯れた蓮や、虫に食われた汚い葉にも眼差しを向けてあった。

モネマネが光と影を描き出した印象派の頃より、若冲が1世紀も前に独学で到達していたことも驚きでした。





2016.02.04 14:42|


時代物は長く敬遠してきた私だが、旧い白黒映画を観る機会に恵まれ呪縛から解放されたこの頃。
本作の新聞紹介に次の一節がありました。『女の自信は根拠を求めない。子供の頃から、ずっと目立たぬために周りを注視してきた私だから、そう見えるのかもしれぬが、女は根拠なしに、自信を持つことができる。その力強さに、男は惹きつけられる。男のように、根拠を失って自信を奪われることがない』
おっと待った、世の中には自信たっぷりの女性ばかりではありません。私なぞ劣等感の塊で生きながらえているようなもの・・・。
それほど云わせる作品を読ませてもらおう。読後に爪の垢を煎じて飲めるようなシロモノを発見できればもっけの幸いと図書館で借りました。

受賞作は全6編の短編集ですが、届いたのは『オール讀物』で、表題作の「つまをめとらば」の一篇のみが掲載されていました。

中心となるのは武家屋敷で隠居している56歳ぐらいの幼なじみのリタイアした武士どうし。3度の結婚に失敗した深堀省吾は不義を働いた妻の借金を払いながら戯作者として生計を立てている。もう一人の貞次郎は結婚歴なしで養子を雇い好きな算術を中心に貸本屋業を営んでいる。2人は10年ぶりに会い、たまたま貞次郎が家を探していて省吾の貸家に住むことになります。
貞次郎は所帯を持つ女を連れて来るといいながら一向にその風がない。
というのは、両者とも男同士の生活が意外と平穏だったから・・・。

2人が縁側でお茶を飲みながら話す挿絵は何てほのぼの。

IMG_20160202_0002.jpg

しかし、意味深な会話がー。
『爺二人の暮らしが居心地よくてな。なかなか女と暮らそうという気にはなれんのだ』『そうか』
『これまで衆道と聞くだけで忌避してきたが、男同士が連れ合いになると所まで考えが及ばなかった~。平穏を望むなら男と暮らすのがいちばんだが、男と連れ添うわけにはいかない。連れ添うとなれば女を選ぶしかない。俺のように所帯を持とうか持たないかと迷い続ける者はどうしたらいいものか』

そういいながら2人暮らしはしばらく続きます。

色んなしがらみが毒を生む。その毒を金に替えて生計をたててきた。しかし男同士の暮らしは平穏で毒が生まれず省吾は筆が進まなくなっているのに気づく。スポーツにハングリー精神が必要というのは知っていたけれど、創作にも必須かもしれませんね。
そして貞次郎は決断をする。
さてその決断はどうなるかは、それぞれが読んでからのお楽しみ!
映画にもなりそうですが、配役はどうなるか?
佐世という「罪のない童女のような顔を罪ではち切れそうな身体の上に乗せている」と表現された女性も登場します。
それに省吾の元妻も一筋縄ではいきません。
でも、省吾によると「ふつう」の女なんですってよ(笑)
2015.12.11 15:31|
DSCF5117.jpg

黒名ひろみ著「温泉妖精」、高橋有機子著「恐竜たちは夏に祈る」。どちらも介護職に関係している若者が主人公です。と来ると切実ですが、底抜けに明るい部分も描かれていて好きな作品でした.。
本谷さんの「異類婚姻譚」は結婚とはを考えさせるテーマ。40代位まで悶々としていた自身を振り返るような箇所がいくつかありました。文学賞を獲得した若い作家さんたちの作品は刺激になります。
「徘徊タクシー」の作者坂口恭平さんは作家だけでなく現実でもユニークなことをやっている方でした。

人間はつい目の前の現実を世界のすべてだと思ってしまう。でも、実はそうじゃない! 祖父危篤の知らせに故郷の熊本に戻った僕は、認知症の曾祖母と再会。彼女に導かれるように出かけたドライブで、徘徊老人を乗せて時空を旅するタクシー会社を思いつく。この世にボケ老人なんていない。彼らは記憶の地図をもとに歩いているだけなんだ。

ラストに書かれた星にまつわるエピソードに共感を覚え展望が開けるようで明るくなれます。熊本に行ったら訪れたい!



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