2017.07.07 14:01|

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なぜ金子みすゞは自殺したか。大正ロマンと昭和モダンの時代を生きた詩人の光と影。実弟・上山雅輔の日記に基づく、画期的伝記小説!国民的詩人・金子みすゞはいかに生きたのか。実弟・上山雅輔の目を通して描く、画期的伝記小説! 実の姉と弟でありながら、金子家と上山家で別々に育てられたみすゞと雅輔。互いを深く理解し、芸術を愛する友として過ごした青春時代、そして内に秘めたる恋心。姉はなぜ自ら死を選ぶこととなったのか――。後に脚本家となる雅輔が残した日記を読み解き、大正ロマンと昭和モダンの時代を生きた詩人の光と影に迫る、衝撃のドラマ。



1、 みすゞは童謡詩人として知られているが、私が知っていた『童謡』と本書で語られている『童謡』とは多少違った。童謡は大正中期から昭和初期に白秋、八十らがそれまでの文部省唱歌を批判して作成し運動によって普及させ、文芸的要素を多く含んでいたらしい。しかし童謡は読む文芸から唄う音楽となっていく。だから、金子みすゞさんの詩集を知り、童謡というより詩人のイメージが強く”童謡詩人”と呼ばれる所以が理解できた。


2、 雅輔が15歳の時に影響を受けた詩も印象的だったので掲載します。


只一人(後藤静香作 詩集『権威』より)


人生は

只一人行く旅ぞ。

最後の頼りは

淋しくとも自分だけである。

只一人行くべき自己と知ったとき

どうして粗末にされようぞ。

どうして充たさないでよかろうぞ。

どうして高めないでよかろうぞ。

3、みすゞの才能を最初に見つけた西條八十氏がヨーロッパ留学を機に衰退していく童謡を離れ、時代が戦争に呑み込まれる中で戦時を称えるような作風となり、終戦後は流行歌の作詞者として名高くなっていく変遷も興味深い。

4、実際は弟だった雅輔とみすゞの2人の関係性は複雑だっただろう。お互いライバルで励ましあいながら才能が開花しそうになると妬ましくもなる・・・。九州の片田舎では書籍や映画の話をできる者も少ない。

養父の松蔵は雅輔が放蕩しても不本意ながら経済的な援助を続けた。雅輔もみすゞの夫だった敬一も苦しくなると花街へ出かける日々ー、みすゞの周りの勝手な男どもに嘆きたくなる。

みすゞの世界はあまりにも狭すぎた。仙崎と下関から飛び出していたらもっと彼女の才能は羽ばたけただろうにと臍を噛む思い。みすゞが今の時代に生まれていたらとも考えたが、雅輔の妻になった容子は違う生き方。雅輔は妻・容子と娘らと共に劇団若草を立ち上げ、みすゞの遺稿集を出版し、世にみすゞの存在を知らしめている。



2017.07.05 10:34|映画

 

2014年インド製作

監督 ラージクマール・ヒラーニ


留学先のベルギーで恋に破れ、祖国インドのテレビ局に勤務するジャグー(アヌシュカ・シャルマ)は、ある日黄色いヘルメットをかぶって大きなラジカセを持ち、さまざまな宗教の飾りを身に着け、チラシを配布する男(アーミル・カーン)と出会う。PKというその男は神様を探しているらしく、興味を持ったジャグーは彼を取材する。しかし、PKが語る話は途方もない内容で……。


『きっとうまくいく』の監督と主演者の2人がタッグを組んだ作品だから”きっと面白い”に違いないと迷わず手にしました。

予想通り、最高に素晴らしい作品に出会えた喜びの余韻があります。

宗教をパロディ風に仕立て上げながら信仰とは何かをきちんと掘り下げていく構成、テクニックは見応え充分で、SFコメディジャンルに相応しかった!

主人公(アーミル・カーン)は宇宙からやってきた宇宙人。彼を知る人々は、地球のことを何も知らないで取る彼の純真無垢な行動が奇行に見え、『pk』と呼びます。『pk』とはサッカー用語でなく酔っ払いという意味でした。目玉をぎょろつかせる場面はまるで歌舞伎のにらみをきかせた見得を切ったような演技。あのりゅうとした筋肉を見せつける主演のアーミル・カーンは何とも52歳でした!


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冒頭のTVリポーターのジャグーの果たせなかった恋から始まり、「神/宗教」という重く深遠なテーマを核にどんなラストを準備しているのだろうか。やってくれましたね!pkがジャグーに寄せるほのかな想いを通して、わかり易い結論が導かれていました。

コミカルなエンターティンメントを装いながら神と宗教の本質に迫まった作品だと思います。ジャグーも今どき珍しい女優さんのショートカットが似合い素敵でした。

2017.06.27 09:55|映画


2015年 韓国

ヒマラヤ8000メートル級14峰の登頂に成功した、実在の登山家オム・ホンギルと仲間たちの軌跡を描いた山岳ドラマ。引退した登山家オム・ホンギルのもとに、ヒマラヤ4座をともに登頂した後輩ムテクが悪天候のため、下山中に遭難死したとの報せが入った。誰もが地上8750メートルでの遺体回収を諦める中、ホンギルはかつての仲間たちを集め「ヒューマン遠征隊」を結成し、エベレスト山頂付近に眠る仲間の亡骸を探すため、記録に残ることはない過酷な遠征に挑む。


韓国映画はほとんど観ないのだが、夫と一緒に鑑賞するには共通のテーマで登山ジャンルが無難。

ヨーロッパの登山映画は哲学的な要素を取り入れ、山でも生をめぐって生々しい利害関係が展開されることもある。それに比べ、日本はどちらかと云えば人が踏みめないような雄大な自然を軸に、人間関係が従に描かれているような~。

あるいは単独行かパーティー登山かでテーマが絞られるのかも。私はパーティを組むのは苦手なので、そこでの心温まる触れあいより、過酷な状況で自分と対峙したり大いなる自然に浸るというようなテーマが好き。

本作は勿論「ヒューマン遠征隊」なので、韓国らしい濃い人間関係が熱く語られていた。前半はコミカルに、後半部は感動的に盛り上げてそつなく仕上がった作品だと思う。

私的には、仲間に大きな犠牲を払ってまで遺体を回収してもらうのは重荷と感じるだろうな。


2017.06.24 16:23|

八月の六日間


40歳目前、文芸誌の副編集長をしている“わたし”。ひたむきに仕事をしてきたが、生来の負けず嫌いと不器用さゆえか、心を擦り減らすことも多い。一緒に住んでいた男とは、3年前に別れた。そんな人生の不調が重なったときに、わたしの心を開いてくれるもの―山歩きと出逢った。四季折々の山の美しさ、怖ろしさ。様々な人との一期一会。いくつもの偶然の巡り合いを経て、心は次第にほどけていく。だが少しずつ、けれど確実に自分を取り巻く環境が変化していくなかで、わたしは思いもよらない報せを耳にして…。生きづらい世の中を生きる全ての人に贈る“働く山女子”小説!


山の風景から醸し出される自然美や感じることの表現は言うまでもないが、きつい山登りの最中に「どうして来たんだろう」と後悔する心理描写に共感しながら読み進んだ。著者の北村薫さんはああ見えて山登りもしてるんだと疑いもせずに。ところが、彼のインタビューに『編集者に登山女子が多く、彼女らから話を聞いて書いた』とあった。へぇ~そうだったのかとたまげた。それぐらいに迫力あったし、私が山に登る雰囲気に近かったのだ。

この本には山好きと、本好きの要素が満載されていて全く私のために書いてもらったようで嬉しい。

主人公は山に行く時にリュックに2,3冊の本をしのばせる。本の紹介や彼女の周囲に居る女友達や山で知り合った人らとの会話。亡くした友人への切ない想い。

単独登山家として有名な加藤文太郎の言が懐かしかった。新田次郎の小説「孤高の人」のモデルとなった人だ。『臆病な心は先輩や案内に迷惑をかけることを恐れ、彼の利己心は足手まといの後輩を喜ばず、ついに心のおもむくがまま独りの山旅へと進んでいった』

文太郎の心中を察している件に、見つけられなかった自身の心を言い当てられた気がして再読しようと思った。

高校時代に所属していた演劇部のエピも心打たれた。高校時代に主人公が脚色したシェークスピアの「十二夜」を演劇大会に持って行き、審査員の大御所が上演された演目をすべて観ずに(居眠りしていた)評価されたことに不信感が募り、会場で指摘した主人公。それに応対した大御所の返事など興味深かった。

本が好きで山が好きなAに贈ろう!



2017.06.15 14:11|映画

アフリカの女王


監督: ジョン・ヒューストン(John Huston)
出演: ハンフリー・ボガート(Humphrey Bogart)、キャサリン・ヘプバーン(Katharine Hepburn)
米国アカデミー賞: 主演男優賞(ハンフリー・ボガート)

1951年 アメリカ・イギリス合作?


ローズが魅力的に描かれ楽しめるエンタメ作品だったと思います。原作は1935年ごろに上梓されているのに、ローズは現代にも引けを取らない女子力を発揮。時代には関係ないのかもしれませんねぇ~。タイトルだけの時は、アフリカの女王=ローズと勝手に想像しましたが、意外にもオンボロ舟の愛称でした。

アフリカ大陸が19世紀後半から西洋列強の植民地の狩場だったのに今更ながら唖然とさせられます。その頃の世界史を俄拵えで薄おさらいしました(汗)。

ローズが兄と布教していた宗教がメソジスト派というのに少し親近感を覚えました。最初にメソジスト派を知ったのは小説”赤毛のアン”でした。ウィキペディアによると、日課を区切った規則正しい生活方法(メソッド)を推奨したのが特徴的で、メソジストという名称は「メソッド」を重んじることから「几帳面屋」(メソジスト)とあだ名されたことに始まったらしい。そこにローズの人柄を見たような気がします。(アンの養い親であるマリラに似ているようでもあった。そう云えば彼らも兄と妹でしたね)

チャーリーから第1次世界大戦が勃発したのを聞かされたローズ。安全地帯に逃げ、川下の湖に浮かぶドイツ帝国砲艦ルイザ号を手製の魚雷で撃沈することを提案するほどの女性です。何も知らない無鉄砲さに半ばあきれながらも、勝ち気で前向きなローズに魅かれていったチャーリ―。狭い船上での男と女ー、恋に陥らずに難局を乗り越えられるはずがない(笑)。チャーリーの経験に裏打ちされた技術力や体力がなければ脱出はおろか魚雷もできなかったのは当然でしょう。ちょっと粗野でローズに振り回されつつ次第に意識するようになり好きになっていく。日常だったら出会えないまま不釣り合いのカップルだったかもしれない・・・。一見男が舵取り引っ張っていっているようで内実はそうでもないというのは珍しくはありません。

ラストで船上結婚式を挙げるのは時間稼ぎだろうと予想はしていたのですが、まさか”アフリカの女王”が土壇場でやってくれるとは!

同居している自然の美しさと厳しさが描写されているのに納得できました。迫力ある本物のライオンや猿、カバやワニの他に岸辺を彩る花々など雄大なアフリカ、いっぽう蚊と蛭に泣かされたり。

企画で兼題にならなければ手に取るのをためらってしまう旧い名作の数々。

ポールさんに機会を与えてもらい感謝致します。


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