第4弾 パンズ ラビリンス
製作国 メキシコ/スペイン/アメリカ
2006年 監督: ギレルモ・デル・トロ
スペイン内戦で父を亡くし、独裁主義の恐ろしい大尉と再婚してしまった母と暮らすオフェリア(イバナ・バケロ)。冷酷で残忍な義父から逃れたいと願う少女オフェリアは、昆虫に姿を変えた妖精に導かれ、謎めいた迷宮へと足を踏み入れる。すると迷宮の守護神パンが現われ、オフェリアこそが魔法の王国のプリンセスに違いないと告げる。彼女は王国に帰るための3つの試練を受けることになり……。
前作がぶっ飛んでいたので、今回はバランスを取ってダーク・ファンタジーとなったのか。タイトルの『パンズ・ラビリンス』とは牧神(パン)のラビリンス(迷宮)という意味あいだ。
スペイン内戦の深刻さと幻想の国のファンタジー性の両者を同時に描いてあり、戦時下とおとぎ話の組み合わせってあまりに隔たっているのではとの思いも確かにあった。でも、苦しい時ほど、厳しい現実から逃避したい気持ちは強くなる。童話が大好きで夢見ることが大好きな少女オフェリアが、パンに導かれるようにプリンセスとして魔法の王国に惹かれていき想像の世界を創り上げたとすれば納得がいく。そして、彼女は3つの試練をパスして地下王国にプリンセスとして迎えられる。ある意味、このラストは死を意味するのだがオフェリアの亡骸には笑みが浮かんでいる。これはある種のハッピーエンドなのか?いたいけな子供が戦争の犠牲になった現実には手放しで喜べない。オフェリアは戦争や理不尽な父から逃れ解放されたから微笑んだだけなのでは?どちらともいえない結末に割り切れなさが残った。
アカデミー賞で撮影賞、美術賞、メイクアップ賞の三部門を受賞しているのは文句なし!冒頭で現れる一匹の虫(たぶんナナフシ)、それが手足と羽がある「妖精」の姿に変化していくのだが、今まで描かれてきた夢溢れる妖精ではなくどこかグロテスク。病気にふせる母のベッドの下に置いたマンドレイクの根なども人形をしていて不気味。
たぶんグロテスクな妖精や牧神(パン)にしたのは、戦時下にあって、オフェリアは子供らしいファンタジーの世界を創り上げられなかったからだろう。痛ましい。
同監督は大好きな『ホビット』でも凄まじい悪魔的なゴブリンを描いている。
平凡な奇跡を毎日繰り返しハッピーエンドのその先へゆく
(天野慶 「つぎの物語がはじまるまで」)