第7回 真冬のファンタジー企画 「となり町戦争」
戦争という「業務」で繋がれた“僕”と“香西さん”
「舞坂町はとなり町・森見町と戦争を始めます。開戦日5月7日。」ある日届いた、となり町との戦争のお知らせ。偵察業務に就かされた“僕”は、業務遂行のために、対森見町戦争推進室の“香西さん”と夫婦生活を始める。戦時にもかかわらず、町は平穏を崩さない。かろうじて戦争状態と分かるのは、日々のニュースで発表される戦死者の数だけ。だが、戦争は淡々とした日常生活を静かに侵食していき、“僕”は、知らず知らずのうちに、その戦争の中心にいたのだ。
『となり町戦争』は三崎亜紀による小説が原作となっていて何年か前に手に取ったのですが、中途で断念しています。今回の"ブログdeロードショー”はファンタジー作品。偶然ギャオでやっていて、設定がとなり町との戦争という架空の設定だったのでSFジャンルにもなるだろうと、リベンジも含めて観ました。
戦争は知らないだけで、世界のどこかで起こっていて、見て見ぬふりをしているだけなのではと問いかける作品だろうと受け取りましたが、全体的に真に迫って来なかったというのが感想です。でも、こんな風に変わらない風景の中で平穏な日々が浸食されていくかもと考えるとぞっとします。新聞に毎日何人死亡とカウントされていたのですから。
主人公の北原を演じているのは苦手な江口洋介、舞坂町役場総務課でとなり町戦争係の仕事に就いている瑞希を原田知世が演じています。2人は、潜入したとなり町で、瑞希の書いた業務マニュアルに順じ疑似夫婦を装い日常を送っていますが、ある夜、瑞希が北原の部屋に入って来てベッドを共にするシーンがあり別な展開を予想しました。しかし、後にこれも「セックス欲望処理」という業務マニュアルだったことが明らかになり、恋心が芽生えていた北原は落胆し私も苦笑。瑞希は瑛太演じる弟に対して姉弟の感情が揺れ動くぐらいで、他は人間的な感情を抑制し業務を忠実に果たしている職員でした。オフの時のようなウエーブのかかった髪に愛らしいワンピース姿の瑞希とカチッとしたスーツを着用している彼女の対比で、つかの間見せてあったのかもしれませんが・・・。そういえば弟も姉の雰囲気が少し変わったのは北原の影響だろうと言ってました。
仕事を辞めた北原が戦争推進室業務に戻ろうと電車に乗り込む瑞希を降ろして説得しイイ感じになりかけた時に、次の戦争を告示するアドバルーンが上がるのです。象徴的なラストでした。瑞希はこれからどうするのだろう?
印象に残ったセリフを挙げておきます。
町民が役場の人間に問いただすシーンで「なぜ戦争をしなければならないのか?なぜ隣町の人間と殺し合いをしなければならないのか?」。その質問に役場の人間は「我々は隣町と“殺し合い”は行っておりません。殺し合うことを目的に戦争をしているのではなく、目的達成のために戦争をしていて、その結果として死者が出るということです」と応えています。隣どうしの町々が合併して市町村が減っている現在、『となり町戦争』とは銃撃戦がなくても福祉が行き届かずに死亡するような事例も含まれるのではと思ったりもしました。
戦争推進室室長・室園 を演じていた余貴美子の服装、つき出した胸や身体にぴちっとした短めのスカート、積み上げた髪形のユニークさが目に留まりました。
todoさんに教えてもらいました。
(2016年12月の別冊・文芸春秋に掲載された三崎さん自身の文章から )
「三崎さんの小説って、SFですね」
大阪の、某書店の書店員さんに言われた言葉だ。
「サイエンス・フィクションじゃなくって、『少し、不思議』の頭文字のSFです」
うん、言い得て妙だ。
ーーー中略ーーー
「素敵な、ファンタジー」になるかどうかは「すこぶる、不安」なんだけれど、「それでも、奮起して」、「締め切りギリギリまで、踏ん張る」しかない